YACHIYO HOUSE / 八千代の住宅
Yachiyo,CHIBA
2008

DATA
Site area / 138.38㎡
Building area / 66.37㎡
Total floor / 103.79㎡
Structure / W structure
Main use / housing
Photo / 小川重雄

ー<ナナメ>の余剰性ー
敷地は郊外の古い住宅造成地の端部で、西側に視界が開けた落ち着いた住環境の中にある。建て主からの主な要望は気分に合わせていろいろな居場所で過ごすことができることと、キッチンから他の場所の気配が把握できるような配慮が求められた。そして、打合せの過程で新たに<ナナメ>というキーワードが建て主から提示された。 参考として用意された<ナナメ>の資料には、片流れの屋根がそのままインテリアに現れた室内や、高い吹き抜けの天窓から降り注ぐ光や、部屋の中にいくつも設けられたニッチ状のスペースなど多種多様で、具体的な形態や嗜好というよりも何か漠然とした概念が現れていた。つまり、<ナナメ>の希求とは住まい方や合理性やコンテクストなどを超えて、何を住宅の根拠とするかという問いである。斜めの形態操作はスペースの中に非効率的な隙間のような空白をつくる。その空白は住宅のような限られたスペースの中では無視できない大きなウェートを占めてしまう。そこに住処としての手掛かりがあるのではないだろうか、その余剰性に自身の個人観を重ねてみたい、という想いが<ナナメ>という言葉に込められていた。 約9M四方の平面をもつシンプルなヴォリュームをスラッシュ状に横断するHPシェル曲面の壁を配置する。壁はその形状によって水平・垂直への流れや内包性または開放性など、場の特性の相互作用に働きかける微地形のようなものだ。そこにレベル差や距離感をコントロールしながら居場所を配置することで多様な場の生成と統合を試みている。 HPシェル壁は鉛直荷重を負担する2700mmスパンの柱間に柱と同断面の杉無垢材をずらしながら並べて固定した。優しい手触りをもつ素材の親和性と対比的に、見る方向によってはエッジがつくるシャープな影が強いコントラストを生み出す。強さと柔らかさを備えたこの<ナナメ>が経年変化による風合いと居住者の経験を重ねながら、住処の意思を支え続けていくことを期待している。